音大受験課題曲 48のエチュード17番

世界中ほぼ全ての音楽大学の入試で使用されている48のエチュード。受験生の皆さんはもう手にして練習されている事と思います。 毎年指定曲が変更されるのですが、17番は毎年全ての学校で100%指定曲に入っています。そして、当日の演奏指定曲に入る確率もかなり高いです。 そして、難易度も高い!

この17番の楽譜を見て「無理かも・・・。」と挫けそうになったり不安な気持ちになる方もおられるでしょう。

今日はその不安な気持ちを解消しましょう! 装飾記号の演奏方法やカデンツァの演奏方法を知らないから不安なのです。
全ての生徒さんに何度も申し上げている事ですが、「出来ないこと」があるのではなく「知らないこと」があるだけです。どう言うものなのかを知れば解決策は自ずと見えてきます。

ではこのエチュード17番を見て行きましょう。

この曲は8分音符を一拍としてカウントするのでその感覚に慣れましょう。
最初の難関は3小節目の2拍目4つの装飾音符と4拍目の6つ並んだ32分音符、その上に何故か同時についているスラーとスタッカート・・・。

まず、4拍目の6つ並んだ32分音符は6連符です。6のつけ忘れです。楽譜に書き込んで下さい。16分音符一つ分の長さに3つの音符が入るスピードで演奏します。

スラーとスタッカートが同時についている記号は「メゾ・スタッカート」又は「ソフトスタッカート」と言う記号です。これは音を切って演奏するけれどもスタッカートよりは長くと言う意味です。演奏のニュアンスとしては撥弦楽器で演奏するように余韻をつけて演奏します。 楽典の試験にも出て来ますので覚えておきましょう。(回答はメゾ・スタッカート:スタッカートよりかは長く音を切って演奏する、と答えます。)

そして2拍目についている4つの装飾音符は8分音符の裏拍に均等に入れて演奏します。
実際の楽譜に表すとこうなります。

では、この曲の2小節目4拍目から演奏してみましょう。

そして、2段目1小節目の装飾音符からのトリルからのさらに装飾音符からのさらに装飾記号! これは楽譜にするとこのようになります。 トリルの演奏法に関しては色々ありますが、「なんとなく」はこの手の曲にはありません。きっちり丁寧に演奏しましょう。


そして、この曲の一番の難所がカデンツァでしょう。これは図解すると次のようなイメージになります。

では実際に演奏してみましょう。 あくまでも一つの例として捉えて、自分なりの演奏を追求してみて下さいね。

3段目3小節目の8分音符に付いているトリルと装飾音符は実際の楽譜にするとこのように演奏します。

では3段目2〜3小節を演奏してみましょう。

下から2段目4小節目音符の前についた装飾、さらにトリル、そして音符の後ろに付いている装飾音符は実際の楽譜にするとこうなります。

楽譜にすると細かくて見づらいですよね。だからトリルやターンのような記号が出来ました。(昔は紙やインクがもったいなかったのもあるとおもいます。)
この部分も演奏してみましょう。

最後の段2小節目のトリルと装飾音符も楽譜に直すとこのようになります。

演奏はこのようになります。

ではこの曲を全て通して演奏してみましょう。指遣いは音程を補正するためのものも多いので、セルマーやクランポンを使用している方は参考にして下さい。ヤナギサワは高音の補正の必要が無いので、ノーマルフィンガリングで大丈夫です。

楽典の試験ではターンやモルデントなどの装飾記号を実際の楽譜に記載する問題も出ますので、明確に答えられるように色んな楽譜を読む練習をしましょう。その際「何調か」「移調しているか、それは元の調とどう言う関係か」も考えてみて下さい。これは試験を通過する際だけではなくあなたがミュージシャンとなってからも必要な力です。自分の基礎を築くと思って取り組んで下さいね!

そして、この17番は全曲の中でも群を抜いて美しい曲です。大切に慈しんで練習して下さいね。
受験頑張って!!

ところで・・・・先日「世界に人気の日本の伝統食はカレー」と言う噂を小耳に挟みましたが、私はカレーはスパイスカレー派です。インドカレーが好きです。

村田 紅
大阪音楽大学卒業後ミ・ベモルサクソフォンアンサンブルメンバーとしてヨーロッパ諸国やアメリカカーネギーホールやタイ王室、中国などでのクラシック音楽の演奏を経てジャズ、ラテン、現代音楽とジャンルにとらわれない演奏スタイルを確立。 音楽理論、ソルフェージュのレッスンも行っている。