前回のブログでも申し上げた通り、音楽を長年学習してきた上級者でも最後まで苦しむのは「リズム」です。
音色も選択した音もテクニックも申し分無いのになんか幼稚な演奏に聞こえるのはリズム感が問題です。リズムがあっていないのです。 逆に間違った音をちょっと外れた音程で吹いているのにミョ〜にカッコ良かったりするのはリズムが合っていてリズム感がバッチリだからなんです。
じゃあリズム感ってなんなのよ、どうすりゃ良いのよ!という問題についてじっくり考えてみました。
リズムには種類が数多くあります。例えば三拍子だけでもメヌエット、ワルツ、ジャズワルツ、ウインナーワルツ、Java、サーカスワルツ、マズルカ等があります。これらの違いはそれぞれのアクセントの位置が異なるところにあります。アクセントがあっていないとそのリズムに聞こえません。 (ムラータミュージックのサックスレッスンではラクール第1巻の5番を学習する際にこの三拍子の違いについてお話ししています。)
三拍子だけではありません。様々なジャンルのリズムがあります。身近なものからいくつか例を挙げてみましょう。
スイング(ジャズワルツを含む)、ボサノバ、アフロキューバン、サルサ、サンバ、アルゼンチンタンゴ、コンチネンタルタンゴ、クンビア、ベンベー、ファンク、カントリー、レゲエ、スカ、8ビート、ディスコ、シャッフル、ハバネラ、サラバンド、ジーグ、フレーボ、ダンソン、チャチャチャetc…..数えるとキリがありません。 上記のリズムには全てステップ(踊り)があります。
ほとんどの音楽は踊るためにあります。バロック音楽もステップが沢山あります。昔から人が集まって楽しく踊るために音楽は存在したと言っても過言ではありません。 その点から考えても音楽を演奏する際にリズムが重要な鍵を握っているのは明らかでしょう。
じゃあリズム感が良い人ってどういう人なんでしょうか。
長年レッスンをしてきて「お、この人リズム感良いな。」と思う人にはある特徴があります。それは何かのスポーツをしている(またはしていた)人です。
「体を動かす事が得意な人はリズム感が良い。」 これは何となく納得してしまう方が多いのでは無いのでしょうか。しかしどうしてでしょう。この事について考えている時に興味深い本と出会いました。 養老孟司著の唯脳論です。
楽器の演奏家は、素人には考えられないほどの巧緻さによって、演奏を行なう。この中枢はどこにあるのか。それは、おそらく右側の大脳半球のブローカ中枢に相当する部位にある。つまり、我々の言語運動の中枢が左側にあるなら、演奏運動の中枢は右にある。
この本には演奏に関する脳の記述が大変興味深く取り扱われています。また、次のようにも書かれています。
形の真髄はリズム リズムは聴覚ー運動系の話である。音楽にはリズムがあり、メータがあり、ビートがある。
この本を読んで府に落ちた事が数多くありました。楽器の演奏も歌うことも体をコントロールする事、すなわち運動であると言う事です。
この事について確信を持つ事実がとても身近なところにあります。私とムラータが所属しているサルサバンドのコンガ奏者のビクトル・サガーラ氏はキューバで人気バンドのCharanga Habanera, Charanga forever のコンガ奏者であり、素晴らしいダンサーでもあるのですが、体育の先生でもあったのです。ムラータもとてもダンスが上手ですよ!
以上の点を踏まえて考えると「音楽とリズム感は運動系にある。」と言うことを理解しておくのは楽器演奏の習得に役に立つのでは無いでしょうか。
今回はリズム感は身体運動と密接な関係がある事について考えました。次回はこの事を踏まえた上でリズム感を良くするためにはどのような練習をすれば良いかを考えてみたいと思います。