放置される店

ある日のランチ。
揚げ春巻き、根菜のピクルス、ビーフン、ゴーヤの卵炒め、グリーンカレー、ご飯、スープ、好きなドリンク。

しめて¥1,000也。

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そしてまたある日、
コーンの揚げ物、ピクルス、ビーフン、厚揚げのトマト煮込み、チキンカレー、スープ

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どれも細やかで繊細な心の行届いた素晴らしい味です。

これはスタジオ近くのベトナム料理のお店です。

この細やかなお料理と裏腹に接客には微塵のかけらも愛が無い。

まず、ランチタイムに店に行くと看板がCLOSEとの表示。(裏返すとOPEN)

まだかな〜と思い、入って「すみませーん、ランチまだですかー?!」と大声で尋ねると、厨房から店主がぬぅ〜っと出て来てボソッと「やってます。」

「看板がCLOSEのままですよ。」
と、申し上げても
「ああ…。」とつぶやくだけで直しに行かない。
直さんのか!とツッコミたいけど、店主が引っ込む前に注文しないとすぐに厨房に引っ込んでしまうので、

「プレートランチお願いします!」と注文。

小さく頷き厨房へ入る店主。

暫くするともう1人お客さんが入って来た。ドアをそろ〜っと開け、キョロキョロしている。

恐らくcloseの看板を見てまだかなぁと思っているんでしょう。

私の姿を確認すると、安心したように店内へ入り着席されました。

しかし店主は厨房で調理中、一切表には出てこない。

結局この方は私のランチが出来上がって出てくるまで放置されてました。

またある日の事、
ムラータとこの店にランチに来て、メニューを選んでおりました。

おもむろにムラータが店主に
「グリーンカレーは辛いですか?」と聞きました。

店主は即答で「辛いですね。」

それでもムラータは笑顔を絶やさず
「じゃあチキンカレーは辛いですか?」

また店主は即答「辛いですね。」

まだ負けないムラータ、
「どっちが辛いですか?」

店主、「似たようなもんですね。」

笑い転げる私と、不毛な会話をする2人の男。

さらにその日他のお客さんが単品メニューにある「グリーンカレー」を注文しました。それはかなり安い金額でした。
その人もその安さからチョットおかしいとか思わなあかんわな。 うん。

その人のグリーンカレーが出てきました。
それは、給食の小さいオカズであるような金属の小さいボールにちょこっとカレーがつがれていただけでした。

思わずお客さんがビックリして
「あの、ご飯は…。」の言葉に対して

「ついてません。」

「無いんですか…?」

「ライスは別で200円になりますが。」
「お願いします!」
「はぁ。」

私は笑い過ぎてお腹が痛かったです。

ムラータはまた笑顔で店主にこう言った。
「カレー言うたらみんなご飯と食べたいねんから、注文の時にご飯無いて言うてあげなあかんわぁ〜。」

その後カレー単品で頼む人には
「ライスついてませんけど。」とぶっきらぼうに告げる店主の姿を何度か見て、またその度に笑い転げていた私と、優しく見守るムラータでありました。

接客は最悪ですが、料理はホントに美味しいです。

元々フレンチのシェフだった店主の料理は本当にきめ細やかで、美しく、美味しいです。

この店に行く際は無愛想にされたり、ほっとかれる事を楽しむくらいの心の余裕を持って行くことをお勧めします。

それか私のように店に入った途端、大声で厨房に向かって注文する事ですね。

何度も言いますが、美味しいですよ。

村田 紅
大阪音楽大学卒業後ミ・ベモルサクソフォンアンサンブルメンバーとしてヨーロッパ諸国やアメリカカーネギーホールやタイ王室、中国などでのクラシック音楽の演奏を経てジャズ、ラテン、現代音楽とジャンルにとらわれない演奏スタイルを確立。 音楽理論、ソルフェージュのレッスンも行っている。